ヘルスリテラシー4つの領域

ヘルスリテラシーとは「健康に関する情報を入手し、理解し、活用するための能力」を指しますが、ヘルスリテラシーに関するテキストの著者で社会言語学者のChristina Zarcadoolasによると下記の4つの領域に分けることができるとしています。⑴⑵

それぞれの領域について自身の考察を入れながらご説明します。

基本的リテラシー

読み書き、計算能力、合理的思考力を指します。古典的な識字力という意味であれば、日本は江戸時代から寺子屋制度のおかけ世界トップレベルの識字率を誇っており、それは現代にも義務教育を通して引き継がれています。

しかし、最近は少し違う形での識字力が問われる世の中になっています。その背景として、SNSの発達により短文で一気に情報を世界中に拡散することが可能になりました。

その恩恵も大きい一方、その短い文章の内容を元に諍い、いわゆる炎上が起こることも日常茶飯事です。

原因の一つとして、それらの文章の背景や、文脈を理解できていないことがあります。

炎上全てが悪いわけではありませんが、そのことで過剰な誹謗中傷に繋がることは望ましいことではありません。

健康サービスを受ける側と提供する側が相互理解を深め有意義なコミュニケーションを図るために、文章の背景や文脈を読むリテラシーも現代においては必要となります。

科学的リテラシー

科学や健康が日常生活と密接に関係していることの認識、身体や病気について知識や、確率やリスクについての知識を指します。

義務教育から高等教育に掛けて学ぶ理系科目や保健体育での知識の蓄積。

自分とは関係がないという認識の方も少なくありませんが、逆にどなたにとっても必要なものです。

ただし、矛盾するようですが科学の「不確実性」への理解が重要になります。

健康、医療分野の情報は日々アップデートされています。

これまで常識であったことが、ある日間違いだったと言われることもあります。

自身や周りの方の健康のために常日頃情報を更新し、その時々で最善の選択をするという姿勢が重要です。

文化的リテラシー

健康に関する行動を取る上で、自身が所属する文化(集団の信念、習慣、世界観)を認識、理解した上で活用できる能力を指します。

例えば日本において尊ばれる和の文化は、一歩間違うと同調圧力となってしまいます。自分は意見が違うという場合でも、空気を読み他人に合わせざるをえないということが起こります。

個人の権利を最も重要な価値と考えるアメリカとは対照的ですね。

もちろん、どちらが良い悪いという単純な話ではありませんが、そのような国民性があることを認識した上で物事を判断する、他人の判断を推察するということが文化的リテラシーに含まれます。

市民的リテラシー

とは、社会的な問題を認識し、社会への意思決定過程に参加する能力を指します。

健康保険・介護保険などの制度や法律、その決定の方法について知り働きかけることも含まれます。

これも国民性が関係してきますが、日本人は政治に対して人と話をすることをタブー視しています。

高校生くらいまでは一方的な受け身の授業があるくらいで、それをテーマにディスカッションすることは少なくても自分が学生の頃はありませんでしたし、現在でも大差ないのではないでしょうか。

高知がまだ土佐藩だった幕末、30代前半だった武市瑞山が「土佐勤王党」を設立し、国策について議論し、藩への働きがけをしていました。

尊皇攘夷の可否、悲劇的な顛末は別として、そのような歴史、文化がこの地にあったことは誇らしいことだと思います。

健康の分野だけに留まらず、世の中で起こっていることを自分ごとと捉え、必要な時は行動に移すことも必要かもしれません。

学びの機会の提供

上記のように4つの領域に渡るヘルスリテラシー。

一朝一夕で身に付くものではありませんが、高知ヘルスリテラシー向上協会では高知で少しでも多くの方が自身の健康に興味を持ち、主体的に行動を取ることを促せるよう学びの機会を提供していきたいと思います。

参照
Zarcadoolas, C., Pleasant, A. F. & Greer, D. S. : Advancing Health Literacy: A Framework for Understanding and Action. San Francisco, CA: JOSSEY BASS, 2006.

Understanding health literacy: an expanded model. Christina Zarcadoolas, et al. Health Promotion International, Volume 20, Issue 2005, Page 195-203. 23 March 2005

投稿者プロフィール

溝渕知秀
溝渕知秀Doctor of Chiropractic
米国Doctor of Chiropractic
ニューヨーク州臨床免許取得
日本小児カイロプラクティック事務局長
オーツリーカイロプラクティック代表